活動の記録

2018年度 定期総会報告・合同研究大会

2018年7月4日 11時59分 [関東私立管理者]
合同研究大会

日時 : 2018年月5月13日(日)11:45−12:45 (大村記念ホール)

場所 : 北里大学(東京都港区)大村記念ホール(旧:薬学部コンベンションホール)


総会に引き続き、東京地区教職課程研究連絡協議会との合同研究大会が、14:00~17:10に開催された。  


シンポジウム

テーマ「教職課程再課程認定後の教員養成の在り方を問う


基調講演者:

教職=専門職の確立をめざして

東京大学 勝野 正章

 本報告では、まず、戦後日本の教員養成が一貫して「開放的制度に由来する免許基準の低下」という批判にさらされ、その対応策として採られてきた「国家による教員養成の質保証」の延長線上に今次の教員養成制度改革を位置づける。そのうえで、その改革の具体的な内容について、コアカリキュラムの策定・内容が学問(教育学、諸科学)と教育実践(教師・学校)を踏まえたものになっているかどうか、大学の自治、学問の自由に対する制約にならないか、「実践的な指導力」は現代社会の教師に求められる力量として必要十分か等の問題点について検討する。そして、今次の教員養成制度改革によって改めて投げかけられ、教員養成に携わる関係者が主体的かつ協働的に取組なければならない、3つの対立図式(理論と実践、学術的専門知と教育学知、教育学研究と教師教育)を確認する。最後に教員養成の改革は、教職=専門職の確立を目指して行われるべきものであり、そのためには教育の専門家としての自律性と地位(職務環境、身分・待遇、社会的威信)の保障、そして教育の専門家としての公共的責任を担うことを求めるとともに、実際に担いうる条件を保障することが教員養成の改革と同時に進められなくてはならないことを述べる。


報告者1:

今後のコア・カリキュラムの方向性と大学における教員養成

 

千葉大学 貞広 齊子

 本報告では、まず、現状確認として、他の専門職の養成制度と比較しながら、今後、コア・カリキュラムが拡がることが予測され、不可逆性があることを確認した上で、コア・カリキュラムを巡る残された課題として、「学習」総量の増加への対応、養成と研修制度のシームレスな体系整備の必要性、国際基準との関係性の精査、評価の厳格化への対応等を再確認し、大学における今後の教員養成の課題の共有を行うことにしたい。


報告者2:

これからの時代の教員に求められる資質・能力

 千葉県我孫子市立我孫子第一小学校  木村 尚史
 千葉県松戸市立中部小学校  武田みどり

 我孫子第一小学校では,平成27年度から平成29年度の3年間,(独)教職員支援機構(次世代型教育推進センター)指定「新たな学びに関する教員の資質・能力向上のためのプロジェクト」の実践フィールド校として,「自ら課題を見出し,主体的・対話的に学ぶことができる国語科学習指導」という主題で校内研究を進めてきた。
 校内研究では主に,新学習指導要領で目指す「資質・能力」や「カリキュラム・マネジメント」,「社会に開かれた教育課程」を意識し,“地域とつながる総合表現活動”を位置づけ単元づくりを行ってきた。
 この研究を通して,教職員の「学力観」や授業作りへの意識が大きく変容した。日常生活に生かすことができる「資質・能力」の育成を目指そうとする意識が醸成され,教科等横断の視点を持ちながら他教科の学習に生かすことができる学習を目指した授業作りを行うことができるようになった。
 社会がめまぐるしく変化するこれからの時代に対応できる児童を育成するためには,教職員には,“学級経営力”“教科指導力”“コミュニケーション力”“学校経営に参画する力”“児童を育成したいという強い思い”が欠かせない。またその力を身に付けるためには,“素直さ”“しなやかさ”“謙虚さ”“努力する意識”など,社会人としての根本的資質・能力が必要不可欠である。大学教育学部においては,そのような根本的資質・能力を育ててほしい。


報告者3:

教員養成を考える ―地域とともにある学校の視点から―

特定非営利活動法人まちと学校のみらい 竹原 和泉

 地域学校協働活動とコミュニティ・スクールを両輪として一体的に推進する時、どの地域にもあった学校と地域の営み「仕組み」となり「継続性」が高まった。そして「社会にひらかれた教育課程」実現のため、地域と協働し、ネットワークを活かすことが求められている。横浜市東山田中学校ブロックの14年間の取組みから、学校と地域がいかに連携・協働し、それぞれの役割や強みを活かして子どもたちにかかわっているかを具体的に紹介するとともに、次の世代の教員に求められる姿を考えてみたい。
 社会総がかりで子供にかかわる時、大人たち(教職員・地域のボランティア・企業・行政等)も新しい価値と出会い、学びを深める必要がある。学び続ける大人の姿から、学びつづける子供の未来が見えてくる。

2017年度 第2回研究懇話会

2017年12月17日 17時10分 [関東私立管理者]
研究懇話会

2017年度 第2回 研究懇話会
テーマ:再課程認定を機に教職課程の新たな充実を目指す
-再課程認定、教員育成指標-

日時:2017年12月17日(日) 13:30~17:10
場所:法政大学小金井キャンパス梶野町校舎 東館2階体育館

【タイムテーブル】
13:35~13:45 会長・研究部長挨拶
13:45~14:55 (1)再課程認定に向けた検討状況
14:55~15:10  休憩

15:10~15:25  (2)域内都県市における教員育成指標の検討状況と 
      大学教職課程の対応の在り方 
15:25~16:45  グループ討議
16:45~17:10  質疑応答

【登壇者紹介】
(1)再課程認定に向けた検討状況
創価大学教職大学院事務室事務長 島信行 氏
玉川大学教師教育リサーチセンター教職課程支援室課長 平山守 氏

(2)域内都県市における教員育成指標の検討状況と大学教職課程の対応の在り方
埼玉県教育局県立学校部高校教育指導課主幹兼主任指導主事 木村郁文 氏
千葉県教育庁教育振興部指導課課長          小畑康生 氏
神奈川県教育委員会教育局行政部教職員企画課企画労務グループ主幹
                          神橋憲治 氏
横浜市教育委員会事務局教職員人事部教職員育成課主任指導主事
                          田中保樹 氏
東京都教育庁指導部企画推進担当課長         榎並隆博 氏


【講演報告】(文責:関私教協)
(1)再課程認定に向けた検討状況
島信行氏
(創価大学教育学部教職大学院事務室事務長)
再課程申請に向けた創価大学での取り組み状況についてご発表いただいた。創価大学では3学部、5学科、16課程(研究科専攻は3研究科、6専攻、16課程)を申請中。教職課程への意識が薄く、改善が見込めない学部・研究科には課程の廃止を促した。依頼に際しては教員一人一人に細かく対応。個々に作成したフォームや手引を添付して依頼した。1月末までに履歴書、教育研究業績書を完成させる予定。島氏は「教職課程コアカリキュラム導入により教員の意識が変わり、何をどのように取り組めばいいのか考えてくれるようになった」と述べた。

平山守氏
(玉川大学教師教育リサーチセンター教職課程支援室課長)
 再課程申請に向けた玉川大学での取り組み状況についてご発表いただいた。玉川大学では5学部10学科(教育学部教育学科通信教育課程含む)、4研究科7専攻、1専攻科1専攻で再課程申請を予定。更に31年度新規開設の高校(地歴公民)も併せて課程申請予定。

「大括り化」「中学校における各教科の指導法が4単位から8単位になった件」「完成年度までの在籍の件」「共通開設の件」「教職課程コアカリキュラム対応表」「教育実習と学校インターンシップ」について、それぞれ詳細に報告された。2月下旬〜3月上旬に全申請書を完成させ、3月中旬〜下旬に文科省へ提出する予定。

 2名の講演後、再課程認定に関連して会場内4名の会場内参加者より登壇者に質問があり回答を頂いた。

(2)域内都県市における教員育成指標の検討状況と 大学教職課程の対応の在り方
木村郁文氏
(埼玉県教育局県立学校部高校教育指導課主幹兼主任指導主事)

埼玉県で現在策定中の育成指標についてご発表いただいた。埼玉県では養成期から発展・後進育成期までを5つの段階に分け、ステージごとに身につけるべき資質能力を設ける方向性で検討中。指標は「埼玉教育の振興に関する大綱」「第2期埼玉県教育振興基本計画」「埼玉県公立学校教員採用試験要項」「公立の小学校等の校長及び教員としての資質の向上に関する指標の策定に関する指針」を参考にした。1月下旬には策定し、その後公表予定。

小畑康生氏
(千葉県教育庁教育振興部指導課課長)
千葉県で現在策定中の育成指標についてご発表いただいた。小畑氏は指標の策定を(採用活動を含め)政令指定都市である千葉市と共同で行っている点を、千葉県の大きな特徴として報告した。指標は「教職に必要な部分」「学習指導に関する実践的指導力」「生徒指導等実践的指導力」「チーム学校に関する資質能力」の4つの柱に整理。今後は指標を活用し、研修体系の構築にも取り組んでいく予定である。

神橋憲治氏
(神奈川県教育委員会教育局行政部教職員企画課企画労務グループ主幹)
平成29年8月22日に策定した神奈川県の育成指標についてご発表いただいた。神奈川県の指標は文部科学大臣の指針、神奈川の教育の総合的な指針(かながわ教育ビジョン)の個別計画、教職課程コアカリキュラムの3つを柱に、約1年2ヶ月かけて策定。「めざすべき教職員像」の内容をA3用紙1枚で説明できる資料としてまとめた。育成協議会には国立大学1校、私立大学2校が参加。現在、指標の内容を研修講座のシラバスに入れる作業を行っている。

田中保樹氏
(横浜市教育委員会事務局教職員人事部教職員育成課主任指導主事)
横浜市の育成指標についてご発表いただいた。横浜市の指標では教員の求められる資質能力をいくつかのカテゴリーに分け、年次ではなくステージごとに(教員や学校の実態に応じて育成されるよう)設定。事務局では教師塾「アイ・カレッジ」の実施、OJT・Off-JTの充実、メンタリング(メンターチーム)の推進など、大学との連携協働の取組を積極的に進めている様子を具体的に報告された。

榎並隆博氏
(東京都教育庁指導部企画推進担当課長)
東京都の育成指標(「東京都教職課程カリキュラム」)についてご発表いただいた。東京都では、平成20年度策定の「東京都教員人材育成基本方針」及び「OJTガイドライン」を基に指標と研修計画を策定した。指標では職層と経験年数によって成長段階を設定した。榎並氏は、指標に示した基礎形成期(1~3年目)の内容は養成段階においても目指すべき姿として活用してほしいことを強調した。また「東京都教職課程カリキュラム」は大学がカリキュラムをつくる上で参考にしてほしいものであり、大学のカリキュラムが対応していないことで、採用試験で不利な扱いを受けるものではないことを説明した。

このあと、5~6人の小グループに分かれ各都県市の教員育成指標について意見交換を行い、必要があればグループ討議後に登壇者に質問をする事になった。
 グループ討議終了後に2名の参加者より、各都県市の登壇者に質問があり、活発な意見交換が行われた。(本文終わり以下略)

2017年度 第1回研究懇話会

2017年7月16日 17時15分 [関東私立管理者]
研究懇話会

テーマ:これからの私立大学教職課程の改善・充実をいかに図るか

      -再課程認定,教職課程コアカリキュラム,教員の養成・採用・研修,

初等中等教育の教育課程-

 

日時:2017716() 14:40~17:15

場所:北里大学薬学部コンベンションホール

 

【タイムテーブル】

14:40~14:45 研究部長挨拶

14:45~16:00   基調講演

16:00~16:10   休憩

16:10~16:30   グループ討議

16:30~17:15   質疑応答

 

 

【登壇者紹介】

<基調講演> これからの私立大学教職課程の改善・充実をいかに図るか

横須賀薫 氏(十文字学園女子大学名誉教授(前学長)

宮城教育大学名誉教授(元学長)

文部科学省教職課程コアカリキュラムの在り方

に関する検討会座長)

 

「講演報告」(文責:関私教協)

横須賀薫氏は、これまで取り組んでこられた業務での体験に基づき、我が国の教職課程について様々な問題点を指摘した。

冒頭で、教職課程を設置している大学が非常に多く、平成20年度では実人員ベースで約11万人が免許状を取得している一方で、採用者数が46千人である事を指摘。免許状の既取得者は、教員採用者の約4倍と多い。量的に過剰であり資格の権威が下がる事、更にこの傾向は収斂されず拡大傾向にある事を述べられた。

そして、専門学校や通信制の教職課程の是非、形骸化する「学力に関する証明書」の問題点、「教職実践演習」授業の実態について触れられたあと、当事者全体で教員免許の質保証を考える必要性について言及された。

 

氏は宮城教育大学開学4年目で同大学に赴任され、実体験に基づき昭和40年代から「開放制」や「学芸による教員養成」について舌鋒鋭く疑義を示された。教員養成の方法を議論する際に「開放制」や「閉鎖制」といった区分け自体にも批判的な見解を述べられた。

 

  一方で、戦後最初に教育制度を作った人達にも理解を示された。戦後すぐに、民主主義が見え始める頃に新しい制度を整えようとした結果がこうなった。師範学校制度に対する批判は、氏自身も同意見。実務的な訓練が中心になった教育課程により、狭い範囲の認識に留まる教員を養成した師範学校制度を賞賛するのはおかしいと明言された。しかしながら、現状の専門科目を履修すれば附随的に免許が取得できる「附随的教員養成」に歯止めを掛ける必要性にも言及された。

 

 氏は戦後間もない時期の教育行政を研究していく中で、教員免許の「国家試験論」という議論が、ある時期までかなり有力だった事を指摘。諸般の事情により採用されなかったが、一連の調査をした氏は教員免許の国家試験制度を提唱。ところがこれは各方面から反対の意見が多く寄せられたとのこと。

 

 そこで現行制度の中での改善点について言及された。各大学はどういった方向の免許課程を中心に展開するのか明確にさせる必要がある。そして学生に本気で勉強させる仕組みを作る事が必要。

 最後に十文字学園女子大学学長在任時の取り組みが紹介された。入学直後の合宿オリエンテーション、実践的カリキュラムの確立、地域の教育委員会との連携、自主学習の場所を設置するといった取り組みを通じて採用試験等で実績を挙げた事を報告された。

 

 

このあと、登壇者も参加して56人の小グループに分かれ、各校の再課程認定に向けての取り組み等について意見交換を行い、必要があればグループ討議後に登壇者に質問をする事になった。

 グループ討議終了後に数名の参加者より、本懇話会の登壇者に質問があり、活発な意見交換が行われた。(本文終わり以下略)

2017年度 定期総会報告・合同研究大会

2017年5月13日 19時00分 [関東私立管理者]
合同研究大会

日時:2017513日(土)11451245

場所:上智大学四谷キャンパス

ソフィアタワー(6号館)36-307教室
2017年度関私教協定期総会議事録.pdf

総会に引き続き、東京地区教職課程研究連絡協議会との合同研究大会が、1417時に開催された。

【タイムテーブル】

シンポジウム 14:0017:00

シンポジスト3名による発表

参加者による意見交換

 

シンポジウム 「教職課程コアカリキュラムの展望と課題」

 

【登壇者紹介】

    教職課程コアカリキュラム導入の経緯とその意義と仮題

 酒井氏(上智大学教授)

    学習指導要領改訂動向から見た教職課程コアカリキュラム

奈須正裕氏(上智大学教授)

    教員養成制度改革動向から見た教職課程コアカリキュラム

油布佐和子氏(早稲田大学教授)

 

発表要旨:

    教職課程コアカリキュラム導入の経緯とその意義と仮題

 酒井氏(上智大学教授)

教職課程コアカリキュラム第1ワーキンググループの副主査をお勤めの立場からコアカリキュラム作成に至るまでの各種提言等の経緯を踏まえ、その意義と課題が整理された。コアカリキュラムが教職課程において共通的に修得すべき資質能力を示すものであり、原則として大学のカリキュラム作成や単位認定における自主性や独自性を阻害するものではないと述べられているにもかかわらず、実際には「全体目標」、「一般目標」、「到達目標」によって詳細に内容が規定されていること、課程認定における位置づけが不明である点等についての懸念が示された。

 

② 学習指導要領改訂動向から見た教職課程コアカリキュラム

奈須正裕氏(上智大学教授)

新学習指導要領及び教職課程コアカリキュラムに通底するコンピテンシー・ベースの学力観を中心にお話しいただいた。コンテンツ・ベイスの学力論に対するアンチテーゼとして登場したコンピテンシーであるが、それは知識基盤社会という現代の社会構造にマッチする形で、従来の知識・技能の習得を主とする学力観の刷新を可能にした一方、社会的効率主義との親和性や系統的知識の習得困難性など、コンピテンシー・ベイスド・カリキュラムの功罪に関わる両義的性格についてご説明いただいた。

 

③ 教員養成制度改革動向から見た教職課程コアカリキュラム

油布佐和子氏(早稲田大学教授)

本発表では、コアカリキュラム策定の背景として「大学教育の質保証」と「教員の資質向上」の二つの潮流とその問題性が説明された。次いで、油布氏は、英米での教員スタンダードの現状にもふれながら、文科省のコアカリキュラムにおいては「優れた教員」の理念が不在であること、「教職課程におけるコアカリキュラムとはなにか」について合意が形成されていないことを指摘した。どのような教員を養成するのかという理念が共有されていなければ教員養成は目的のない技術主義に陥ってしまうこと、コアカリキュラムの導入が画一的な教員養成につながること、などへの懸念が示された。

 

 

   質疑応答

登壇者の講演後、質疑応答の時間ではフロアの参加者から多くの質問と意見表明があった。コアカリキュラムの在り方や教員育成協議会の在り方についての多様な意見が参加者から相次いだ。教員育成協議会の設置については、任命権者が指名するものの、育成指標の策定については決定の権限が任命権者(都道府県・政令指定都市等)にある事を確認した。

2016年度 第2回研究懇話会

2016年12月17日 17時00分 [関東私立管理者]
研究懇話会

2016/12/17  2016年度 第2回研究懇話会

テーマ:教職課程激変か!!  ―私学の目指す教員養成の方向性は

 

日時:20161217() 13:30~17:00

場所:帝京平成大学中野キャンパス7702教室

 

【タイムテーブル】

13:30~13:45  開会のことば、会長挨拶、研究部長挨拶

13:45~14:45   基調講演

15:00~17:00   シンポジウム

 

【登壇者紹介】

<基調講演> 開放制の教員養成の行方

油布佐和子氏(早稲田大学教職研究科教授)

発表要旨:

油布佐和子氏から、近年文部科学省が行ってきている教員の制度改革の動きについて、その政治性と問題性を指摘した上で、海外での教員養成・教員研修の動向にもふれながら、私学の教員養成をどのように構想していくのかをめぐって基調講演がなされた。油布氏によれば2015年末の中教審答申(184号)は教員の養成・採用・研修すべてにわたる改革の流れの集大成である。答申が示したのは教員養成の体制と内容という点で大学の教員養成に介入するものであり、多くの私学が担ってきた開放制の教員養成をなし崩しにするものである。たとえば「育成指標」の作成、「教員育成協議会」の設置は教員養成のヘゲモニーが大学から外部に移ることを意味している。答申が示す教員養成の体制と内容をこのように整理した上で、何のための教育であり、どのような教員を養成するのかという原点に立って教員養成を構想し実行していくことが私学の課題であると結ばれた。

 

<シンポジウム> 今後の教員養成と私学の対応

   佐藤幹男氏(石巻専修大学人間学部教授) 

発言要旨:

 最近の教育政策の動きについて説明いただいた上で、「教育公務員特例法等の一部を改正する法律」の中でも、「教員育成協議会」の制度化において懸念される点についてお話いただいた。「大学における養成」段階の位置づけや、教職大学院を含む大学等と教育委員会の「連携」の影響について懸念される内容についてお話があった。このような動きが教師教育の全段階で教員の質を管理する政策の一環になっていかないための取り組みが必要であるとの指摘があった。

 

   走井洋一氏(東京家政大学家政学部教授) 

発言要旨:

私学における再課程認定の対応について、教職課程担当教員の立場からお話を頂いた。教育公務員特例法等の一部を改正する法律について、私立学校教員の養成と研修についての課題について示され、今後の再課程認定申請においては、教員に求められる項目の積み上げにより、自らの研究を研究領域全体のなかで位置付けるとともに、研究の根幹をなす「見方・考え方」を共有する内容へと変容することを期待していると説明された。

 

   島信行氏(創価大学教育学部・教職大学院事務室事務長)

発言要旨:

教員免許法改正に伴う再課程認定申請の事例紹介として、創価大学の準備状況について報告いただいた。答申の「見直しイメージ」をもとに求められる専任教員の業績や相当関係などを各学部に情報提供し、課程の存続を検討してもらったところ、経済・法・経営学部などで社会科免許の廃止が決定された。現在は平成29年度前期までに全課程の教職科目・担当教員の決定を目指し、教職キャリアセンターを中心に、申請案が適切かどうかの検証を進めている。

 

このあと、参加者全員で5~6人の小グループに分かれ参加者勤務校の再課程認定に向けての取り組みについて意見交換を行い、必要があればグループ討議後に登壇者に質問をする事になった。

 

グループ討議終了後に2名の参加者より本懇話会の登壇者に質問があった。

 

山崎鎮親氏(相模女子大学)からは、①課程認定の取り下げ指導の過程はどのようなものだったのか、②大学独自の指導指針、指標を作ってもよいのではないかという質問があった。①については、島信行氏より事務方で免許の取得状況、採用状況等や、法令上の問題点等の詳細な資料を作成した上で、半年程度の時間をかけて学部で検討する作業を実施。最後は学部長が課程の取り下げの可否を判断したとの回答があった。②については、早稲田大学油布佐和子氏より、指導指針、指標を作成する場合はその指針、指標によってどのような教師が育成されるかをイメージする必要があると述べた。

 

長沼秀明氏(川口短期大学)からは大学間・学生間格差について今回の改訂ではどのような意味をもつのかという質問があった。東京家政大学走井洋一氏は大学間格差については大量採用時代に対応した諸制度により生じたものであるとの見解を示され、現在のさまざまな制度については大学側でも組み立て直す必要があるとの持論を述べられた。

 

2016年度 臨時総会、研究部総会、第1回研究部会、総会報告・合同研究大会

2016年7月17日 19時30分 [関東私立管理者]
合同研究大会

2016年度臨時総会・研究部総会
日時:2016717日(日)13001350

場所:創価大学 S202教室

2016年度臨時総会議事録.pdf

臨時総会終了後、研究部総会が開催され事務局長、研究部長挨拶のあと研究部会の世話人が、各研究部会の活動紹介を行った。

1回研究部会
日時:2016717日(日)14001500
場所:創価大学B3階~4階の各教室

1回研究懇話会
日時:2016717日(日)15151715
場所:創価大学 S202教室
【登壇者紹介】
   野田敦敬氏(愛知教育大学副学長・生活科教育講座教授)
発表要旨:
今年度から2年生後期に実施されることになっている科目「学校サポート活動Ⅰ」についてお話いただいた。自主的なボランティア活動を単位化したいという思いと、学校現場も学生の手を求めていることが導入につながっている。実施期間、活動時間・回数、サポート活動の内容、単位認定等について説明がなされた。学校現場との交渉は、教職キャリアセンターの1部門が担い、教員経験者が重要なパイプ役を果たしているとのことであった。

   森田 真樹氏(立命館大学産業社会学部教授)
発表要旨:

多様化する学校現場体験活動と学校インターンシップについて、立命館大学での実践例を説明された。学校ボランティアや、教育委員会実施のセミナー、実地研修など、教員採用突破を目指す学生は、これら複数経験することが多いことが示された。また、学校インターンシップ導入時期の課題や履修モデルの説明がされ、地区による差の実態、単位授与を伴う学校インターンシップは外の活動とどう差異化するかなどの課題について示された。

2016年度 定期総会報告・合同研究大会

2016年5月14日 18時30分 [関東私立管理者]
合同研究大会

日時:2016514日(土)11451250

場所:早稲田大学早稲田キャンパス 10号館109教室
2016年度定期総会議事録.docx

総会に引き続き東京地区教職課程研究連絡協議会との合同研究大会が、14~17時に開催された。

【タイムテーブル】

基調講演   14:0515:00

シンポジウム 15:1517:00

シンポジスト2名による発表

参加者による意見交換

 

【登壇者紹介】

<基調講演> テーマ 教員養成の立場からアクティブ・ラーニングを問い直す

川島啓二氏(九州大学基幹教育院教授)

         平成27年(2015年)3月に、国立教育政策研究所から出された、「教員養成教育における教育改善の取組に関する調査研究 ~アクティブ・ラーニングに着目して」という報告書作成にあたって、「教員養成にかかわる大学教員の授業改善並びに指導力向上に関する研究班の班長をされた。

さまざまな言語活動や協働的な学習活動等によって、新たな学びを支える教員養成と、学び続ける教員像の確立が求められていると指摘している。また、ICTの活用などの今日的な課題に対して、教員の専門的知識・技能を向上させることを目指している。    

 

発表要旨:
 川島氏は、ご自身が実施された国立教育政策研究所の調査研究の成果を踏まえ、教員養成とアクティブ・ラーニングというテーマについて、1990年代後半以降の高等教育改革の流れという文脈から講演された。
 近年の高等教育改革の政策言説では、課題探求や主体的な学修など「予測困難な将来」社会に対応する人間の育成が強調されてきた「アクティブ・ラーニング」というテーマにはその現在的な表現という面があり、人間観や教育の目標に関わる大きな課題として引き取ることができるという。そして、授業改革のレベルにとどまらず、教員育成システムの改革という大きな課題にむすびつくものとして考えるべきであると講演が結ばれた。

<シンポジウム>

    杉原真晃氏(聖心女子大学教育学科准教授)

             ユニークな経歴の持ち主。子供が好きで、幼稚園の先生を目指し、小学校教員、特別支援学校教員を経て、幼稚園の現場の仕事に就いた経歴を持つ。その後、さらに専門的に勉強したいという気持ちに押されて大学院に進み、研究者となる。

   アクティブ・ラーニングを推奨する論文を執筆。

       また、文科省の「教員養成にかかわる大学教員の授業改善並びに指導力向上に関する研究班」の所外委員として活躍している。     

 

        https://www.u-sacred-heart.ac.jp/interview/msugihara.html

 発表要旨:

幼児教育や教員養成課程での豊富な実践をもとに、アクティブ・ラーニングの意味と大切にしたい要素について説明された。要素として、「真正な学び」であること、教育者と学習者がともに愉しむ「共愉性」があること、教師と子どもの二人称的関係性の必要が示された。
 アクティブ・ラーニングの実践は、組織構成員による協働的、相互作用的な展開によって、レジリエンス(
resilience)の高い教育チームの創出につながると締めくくられた。

 

 

② 河口竜行氏(渋谷教育学園渋谷中学高等学校教諭) 

             高等学校におけるアクティブ・ラーニング型授業を普段から実践している。学校目標は「自調自考」である。次分で調べ、自分で考えるということで、アクティブラーナーを養成する学校であると自負している。生徒は、高校1年から1年以上をかけて「自調自考論文」を作成することが課せられる。          河口先生もユニークな経歴の持ち主。私塾「河口塾」を作ったり、その生徒を募集する傍ら某運輸会社で宅急便を配ったりした経歴をもつ。     
http://www.wakuwaku-catch.com/

 

 

 

発表要旨:

 勤務校の簡単な紹介のあとで授業等での実践例を説明された。渋谷教育学園渋谷中学高等学校では外部のコンクール、他の学校、団体との協同の取り組みにも生徒を自主的に参加させている。また、従来の授業形式とは異なるグループやクラス単位での課題探究を活発に行っている。
 このような取り組みに対して、学力の向上が望めるのかという懸念が保護者や教育委員会などから出る一方で、アクティブラーニングが最終的に大学受験での成果にもつながっている事もあわせて示された。