2017年度 第1回研究懇話会
2017年7月16日 17時15分 [関東私立管理者]テーマ:これからの私立大学教職課程の改善・充実をいかに図るか
-再課程認定,教職課程コアカリキュラム,教員の養成・採用・研修,
初等中等教育の教育課程-
日時:2017年7月16日(日) 14:40~17:15
場所:北里大学薬学部コンベンションホール
【タイムテーブル】
14:40~14:45 研究部長挨拶
14:45~16:00 基調講演
16:00~16:10 休憩
16:10~16:30 グループ討議
16:30~17:15 質疑応答
【登壇者紹介】
<基調講演> これからの私立大学教職課程の改善・充実をいかに図るか
横須賀薫 氏(十文字学園女子大学名誉教授(前学長)
宮城教育大学名誉教授(元学長)
文部科学省教職課程コアカリキュラムの在り方
に関する検討会座長)
「講演報告」(文責:関私教協)
横須賀薫氏は、これまで取り組んでこられた業務での体験に基づき、我が国の教職課程について様々な問題点を指摘した。
冒頭で、教職課程を設置している大学が非常に多く、平成20年度では実人員ベースで約11万人が免許状を取得している一方で、採用者数が4万6千人である事を指摘。免許状の既取得者は、教員採用者の約4倍と多い。量的に過剰であり資格の権威が下がる事、更にこの傾向は収斂されず拡大傾向にある事を述べられた。
そして、専門学校や通信制の教職課程の是非、形骸化する「学力に関する証明書」の問題点、「教職実践演習」授業の実態について触れられたあと、当事者全体で教員免許の質保証を考える必要性について言及された。
氏は宮城教育大学開学4年目で同大学に赴任され、実体験に基づき昭和40年代から「開放制」や「学芸による教員養成」について舌鋒鋭く疑義を示された。教員養成の方法を議論する際に「開放制」や「閉鎖制」といった区分け自体にも批判的な見解を述べられた。
一方で、戦後最初に教育制度を作った人達にも理解を示された。戦後すぐに、民主主義が見え始める頃に新しい制度を整えようとした結果がこうなった。師範学校制度に対する批判は、氏自身も同意見。実務的な訓練が中心になった教育課程により、狭い範囲の認識に留まる教員を養成した師範学校制度を賞賛するのはおかしいと明言された。しかしながら、現状の専門科目を履修すれば附随的に免許が取得できる「附随的教員養成」に歯止めを掛ける必要性にも言及された。
氏は戦後間もない時期の教育行政を研究していく中で、教員免許の「国家試験論」という議論が、ある時期までかなり有力だった事を指摘。諸般の事情により採用されなかったが、一連の調査をした氏は教員免許の国家試験制度を提唱。ところがこれは各方面から反対の意見が多く寄せられたとのこと。
そこで現行制度の中での改善点について言及された。各大学はどういった方向の免許課程を中心に展開するのか明確にさせる必要がある。そして学生に本気で勉強させる仕組みを作る事が必要。
最後に十文字学園女子大学学長在任時の取り組みが紹介された。入学直後の合宿オリエンテーション、実践的カリキュラムの確立、地域の教育委員会との連携、自主学習の場所を設置するといった取り組みを通じて採用試験等で実績を挙げた事を報告された。
このあと、登壇者も参加して5~6人の小グループに分かれ、各校の再課程認定に向けての取り組み等について意見交換を行い、必要があればグループ討議後に登壇者に質問をする事になった。
グループ討議終了後に数名の参加者より、本懇話会の登壇者に質問があり、活発な意見交換が行われた。(本文終わり以下略)