2017年度 定期総会報告・合同研究大会
2017年5月13日 19時00分 [関東私立管理者]日時:2017年5月13日(土)11:45~12:45
場所:上智大学四谷キャンパス
ソフィアタワー(6号館)3階6-307教室
2017年度関私教協定期総会議事録.pdf
総会に引き続き、東京地区教職課程研究連絡協議会との合同研究大会が、14~17時に開催された。
【タイムテーブル】
シンポジウム 14:00~17:00
シンポジスト3名による発表
参加者による意見交換
シンポジウム 「教職課程コアカリキュラムの展望と課題」
【登壇者紹介】
① 教職課程コアカリキュラム導入の経緯とその意義と仮題
酒井朗氏(上智大学教授)
② 学習指導要領改訂動向から見た教職課程コアカリキュラム
奈須正裕氏(上智大学教授)
③ 教員養成制度改革動向から見た教職課程コアカリキュラム
油布佐和子氏(早稲田大学教授)
発表要旨:
① 教職課程コアカリキュラム導入の経緯とその意義と仮題
酒井朗氏(上智大学教授)
教職課程コアカリキュラム第1ワーキンググループの副主査をお勤めの立場からコアカリキュラム作成に至るまでの各種提言等の経緯を踏まえ、その意義と課題が整理された。コアカリキュラムが教職課程において共通的に修得すべき資質能力を示すものであり、原則として大学のカリキュラム作成や単位認定における自主性や独自性を阻害するものではないと述べられているにもかかわらず、実際には「全体目標」、「一般目標」、「到達目標」によって詳細に内容が規定されていること、課程認定における位置づけが不明である点等についての懸念が示された。
② 学習指導要領改訂動向から見た教職課程コアカリキュラム
奈須正裕氏(上智大学教授)
新学習指導要領及び教職課程コアカリキュラムに通底するコンピテンシー・ベースの学力観を中心にお話しいただいた。コンテンツ・ベイスの学力論に対するアンチテーゼとして登場したコンピテンシーであるが、それは知識基盤社会という現代の社会構造にマッチする形で、従来の知識・技能の習得を主とする学力観の刷新を可能にした一方、社会的効率主義との親和性や系統的知識の習得困難性など、コンピテンシー・ベイスド・カリキュラムの功罪に関わる両義的性格についてご説明いただいた。
③ 教員養成制度改革動向から見た教職課程コアカリキュラム
油布佐和子氏(早稲田大学教授)
本発表では、コアカリキュラム策定の背景として「大学教育の質保証」と「教員の資質向上」の二つの潮流とその問題性が説明された。次いで、油布氏は、英米での教員スタンダードの現状にもふれながら、文科省のコアカリキュラムにおいては「優れた教員」の理念が不在であること、「教職課程におけるコアカリキュラムとはなにか」について合意が形成されていないことを指摘した。“どのような教員を養成するのか”という理念が共有されていなければ教員養成は目的のない技術主義に陥ってしまうこと、コアカリキュラムの導入が画一的な教員養成につながること、などへの懸念が示された。
④ 質疑応答
登壇者の講演後、質疑応答の時間ではフロアの参加者から多くの質問と意見表明があった。コアカリキュラムの在り方や教員育成協議会の在り方についての多様な意見が参加者から相次いだ。教員育成協議会の設置については、任命権者が指名するものの、育成指標の策定については決定の権限が任命権者(都道府県・政令指定都市等)にある事を確認した。