活動の記録

2018年度 第1回研究懇話会

2018年9月28日 14時49分 [関東私立管理者]
研究懇話会
テーマ:教育現場における情報機器の活用と
教員養成課程における対応のあり方を問う


日時:2018年7月15日(日)14:40~17:15~
会場:日本体育大学 世田谷キャンパス 教育研究棟

タイムテーブル:
14:40-14:45 開会の挨拶
14:45-15:45 講演 佐伯 胖 氏
15:45-16:00(休 息)
16:00-16:30 講演 下山 幸成 氏
16:30-16:40 講演者間での質疑応答
16:40-17:10 討論
17:10-17:15 閉会の挨拶

発表者:
佐伯  胖 氏(田園調布学園大学大学院人間学研究科 教授)
下山 幸成 氏(東洋学園大学グローバル・コミュニケーション学部 教授)


「情報機器を使う」とはどういうことか


田園調布学園大学 佐伯 胖


 「情報機器を使う」ということについて、根源的な問い直しを迫ったものとして、1992年頃の東京都港区立神応小学校での苅宿俊文教諭の実践を取り上げたい。苅宿氏は子どもたちに当時としては最新だったラップトップ型コンピュータを、ひとり1台ずつ渡し、そこで、身の回りのさまざまのモノ(含、動物)になったつもりで、そのモノから見える世界を図や写真、動画などで表現させ、それを通して自らを語らせていたのである。それは生徒がそれらに「なったつもり」で世界を見直すことを通して、本来の「自分」の見方、見え方を問い直す(リフレクションする)という実践であった。
 講演では、そのような実践が、情報機器を自分の身体の一部にしながら実践世界に入り込む際の道具という媒体(YOU的道具)により、絵的(イメージ化される)世界とその意味するところついての論理的(言語的)世界の往復運動を可能にすることによって、人類がシンボル使用の歴史の中で見失ってきたモノゴトの「原初的な意味理解」を取りもどすことを可能にするものであることを示した。また、そのような絵的シンボルと論理的(言語的)シンボルの往復運動によって、九九もおぼつかない子どもたちでも二桁数×二桁数のかけ算の問題を一歩一歩納得しながら正解にたどり着けるというランパートの実践を説明し、絵的思考と論理的思考を結びつけて考えることの有効性を明らかにし、そこにこそ、マルチメディア処理が容易に可能となっている最近の情報機器を使うということの、真の意味があるのではないかと提言するものである。


教員養成課程で扱うICT活用への対応のあり方


東洋学園大学 下山 幸成


 教職課程コアカリキュラムでは、各教科の到達目標に「当該教科の特性に応じた情報機器及び教材の効果的な活用法を理解し、授業設計に活用することができる」、教育実習の到達目標に「学習指導に必要な基礎的技術(話法・板書・学習形態・授業展開・環境構成など)を実地に即して身に付けるとともに、適切な場面で情報機器を活用することができる」と明記されました。そして、私たち教員養成課程担当教員は、そのような到達目標を達成できる人材を育成することが求められています。
 そこで、教職課程ではどのような情報機器をどの程度どのように扱うことが望ましいのかということをみなさんと一緒に考えていきたいと思います。情報機器を効果的に扱うには、機器の扱い方を知るだけでは不十分であり、機器の特性、機器で扱う内容、機器を使う活動などを踏まえて、機器を使用しない場合と比較してのメリット・デメリットを考えることが大切です。そのために必要であろう知識を概観し、実際にどのようにその知識を使って教職課程で指導しているかをお話いたします。